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NPO法人ぱれっと インターン報告 人と出会い、社会を考え、自分を見つめなおす



1年前、まだ学生だった頃、NPO法人ぱれっとでのインターン終了後に書いた文章。
僕が学生時代にインターンをしていたのはこちらです。http://www.npo-palette.or.jp/index.html

自分の原点がどこにあるのかを読み返しながら考える。1年前の自分を振り返り、今の自分を見つめなおす。

【ぱれっとと出会う前の自分】
大学3年までの私は体育会サッカー部に所属しサッカーに明け暮れる毎日でした。幼稚園の頃から続けてきたサッカーに熱中する大学生活も楽しかったのですが、変化の少ない毎日にどこか物足りなさを感じていました。そして大学3年となると就職活動が始まる時期です。自分が本当にやりたいことがわからないまま、就職活動を始めることに強く不安を感じていました。このままでは駄目、何か行動を起こさなければと危機感だけは強くもっていたのを覚えています。

【ぱれっととの出会い】
そんななかで、「ボランティア学」という明治学院大学の一般教養科目の授業でビジネスの手法を活用して社会問題の解決に取り組む「ソーシャルビジネス」という言葉に出会いました。このボランティア学は、社会起業家と呼ばれる人たちが講師となる授業です。ぱれっとの理事長であり、明治学院大学OGでもある谷口さんは、この授業の講師の一人でした。この授業を通した谷口さんとの出会いが、1年間のインターンシップにつながり、私の人生を大きく変えることになります。

【学びと自分自身の変化】
私の好きな言葉。「世の中には、大きく分けると「イエス」と言う傾向のある人と、「ノー」と言う傾向のある人がいます。「イエス」と言う人は、冒険を手に入れ、「ノー」と言う人は、安全を手に入れます。」1年間のインターンシップでは、自分にとって学びにつながることには、可能なかぎり「イエス」と言って行動しようと思っていました。学ぶ意欲だけはだれよりも持っていたと思います。
8月のスリランカ研修、11月にシンガポールで行なわれたアジア知的障害会議への参加、ぱれっとの新しい家づくり計画に実行委員(「ぱれっとの家 いこっと」立ち上げ委員会)として関わる、たまり場ぱれっと運営ボランティア、雪あそび実行委員長、アメリカ研修。振り返ると、本当に密度の濃い日々を過ごしてきたと感じます。自分にとって、体験するすべてのことが新鮮で、すべての場が大学以上の学びの場となりました。人との出会いを通じて、自分の世界が広がっていく。その中で少しずつ自分の考え方や行動が変わってきたように思います。

【主体的に関わることの面白さ】
一つ目の変化は主体的に関わること
の面白さに気付いたことです。2009年の9月からはたまり場ぱれっとに運営ボランティアとして関わり始めました。活動を通じて感じたのは、自らが主体となって場をつくりだすことの面白さです。
●障害のある人たちの主体性を引きだすためには、まずはボランティアが主体性を発揮して活動に取り組むことが大切です。たまり場にはマニュアルはありません。ルールが先にあるのではなく、人びとの交わりの中で即時的につくり上げていくことを大切にします。ボランティアだけではなく、当事者も主体的に関わりながら場をつくり上げていく。他者を尊重しながら、皆が主体的に関わることで、誰にとってもより所となる居場所ができる。その中で自分たちの居場所を自分たちがつくることの面白さや充実感を感じるようになりました。

【当事者意識をもつこと】
二つ目の変化は、様々な社会の問題に当事者意識をもつようになったことです。社会を変えるために挑戦を繰り返すぱれっとの活動から学んだのは、自分自身が一人の市民として社会に対して当事者意識をもって行動するということ。このことに気付けたのは、やはり現場に出て、身近な他者と真剣に向き合ってきたからだと思います。現場に出て、様々な人の声に耳を傾けること。顔の見える関係のなかでお互いに声を掛け合い、必要ならば助け合うなかで関係性を築くこと。社会を大きく捉えるのではなく、身近にいる他者をまずは気にかけること。ソーシャルビジネス、社会問題の解決と大きく捉える前に大切なのは、この他者に対する「おもいやり」や「やさしさ」という基本的なところなのだと気付くことができました。そして、社会と向き合うことは、自分自身と向き合うことにもつながります。ぱれっとの活動を通じて社会との接点ができることで、自分は何を大切にして生きていくのかということを深く考え、自分はどのような社会をつくっていきたいのかということを真剣に考えるようになりました。

【現在の取り組みとこれから】
現在、私はNPOに興味をもつ若者が集まり、NPOの歴史や制度を勉強したり、現場に出て調査をしたりするグループに参加しています。その中で私たちが大切にしているのは「社会の本質を考える力をつけること」です。社会の問題を個人の問題という、個別の問題として捉えるのではなく、身近な人との出会いからその背後にある社会の構造を疑い、問題の本質を考えること。今後は個々の居場所づくり、表現できる場づくりで終わらずに、その先にある社会構造にどのようにアプローチしていくかを考えていきたいと思います。
これは、昨年行なわれた「ぱれ・コレ2010」(ぱれっと主催のファッションショー)に関わった際にも強く感じたことです。あれほどの感動を生みだせる障害のある人の表現の可能性をもっと社会に出していきたい。単なる話題性のあるイベントで終わらせずに「表現を通して社会を変える」、「社会の仕組みに鋭く切り込む」という企画までもっていくことが大事なのだと思います。表現活動を通じて、福祉という小さく完結しやすい世界を、外の世界へ膨らませていくこと。このような取り組みが大切になってくるのではないかと思います。

【私が考える社会の問題点】
制度が充実する一方で、すべてのことが専門化、サービスの外部化が進み、障害者と接するのは資格をもっているケアの専門化だけ。障害者と健常者と分けられ、それぞれが出会う場が失われている。これは私がぱれっとに関わるなかで感じた社会の問題です。社会の問題を考える際に一番必要なのは「対話の場」であると考えています。専門家だけが固まって話すのではなく、当事者本人、当事者の親、学生、専門家など多様な人が集まり対話を積み重ねること。様々な人の声に耳を傾け、一つひとつ丁寧に積み重ねていくなかで、少しずつ社会は変わっていくのだと信じています。 

おそらく一人では社会に対して何もすることはできません。ゆるやかなネットワークを紡ぎ、変化を起こしていくことが必要になってきます。様々な人の思いを組織化し、ゆるやかなつながりのなかで社会の構造を変えていくこと。市民一人ひとりが真剣に目の前の人と向き合い、他者との出会いから社会の本質を考えられるような社会。このような社会をつくっていくことが、今後の自分自身の役割だと考えています。

【最後に】
「行動力があるね」と言われることがありますが、この1年半を振り返ると自分から決断して動いてきたことはほとんどなかったと思います。だれかの言葉や行動に共感して、自分も動いてみたらいつのまにか止まらなくなっていました。立ち止まろうと思っても、だれかに手を引っ張られて、背中を押されて・・・様々な人との出会いや関わりが自分を動かしてきたのだと思います。この、人との出会いや関わりを繰り返すなかで少しずつ自分のことが見えてきました。自分にとってぱれっとが他者を通じて自分と向き合うきっかけを与えてくれました。この1年半近くで出会った多くの仲間は自分の人生の大きな財産です。一緒に語り合い、笑い合える仲間がいる環境で、だれもが自分らしくいられる場所。私にとってぱれっとは、どこよりも自分らしくいられる場所であり、これから社会に出て、何か行き詰ったときに最初に戻ってくる原点です。私をぱれっとに関わるきっかけをつくって頂いた谷口さんを始め、職員、ボランティア、利用者の皆様、本当にありがとうございました。
一先ず学生としての関わりはこれで終わりです。今までは一方的に学ばせて頂く立場でしたが、これからは社会人として、さらに自分自身を磨き、ぱれっとに関わる皆さんと共に、新しい可能性をつくっていきたいと思います。
(ぱれっと元インターン 黒澤友貴)

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