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ストラテジック・インテントと意志力革命〜戦略バカにならないで野心から経営をデザインする〜

マッキンゼー、デザインコンサルファームの「LUNAR」社を傘下に
http://www.consulnews.jp/2015/05/15/mckinsey_lunar/


ビジネスとデザインが統合される時代に変化してきています。

デザイン思考をはじめとし、デザインコンサルティングという言葉はバズワードになっていますね。








デザインとは、大きな野心を戦略と結びつけること、ということなんだろうな、とも思う今日このごろ。


戦略バカ・分析症候群に陥らないことを、いつも意識するようにしています。
野心や熱がないのに、戦略を実行しようとしても大体はうまくいかない。

5F分析、3C分析、SWTO分析など経営学、マーケティングの分野では様々なフレームワークが開発、活用されていますが、フレームワーク分析をいくらしても、戦略は生まれないし、競争優位性は育たない。


競争優位性を築くものは何か?

改めて、競争優位性を築くものは何かということを考えたときに、この論文にたどり着きました。

ハメルとプラハラッドは、競争におけるポジショニングは、外部要因よりも、むしろ内部要因に大きく左右されるという仮説を立て、1980年代の欧米コングロマリットと国際的日本企業を比較研究した。
1989年度マッキンゼー賞受賞論文】ストラテジック・インテント:C・K・プラハラッド

コア・コンピタンス」という言葉がこの論文から生まれたそうです。


組織の志」こそ競争力の源という副題がついています。


コアコンピタンンス 

コア・コンピタンスとは、企業内部で培ったさまざまな能力のうち、競争のための手段として最も有効なもの。ゲイリー・ハメルとプラハラッドが「顧客に対して、他社には真似のできない自社ならではの価値を提供する、企業の中核的な力」と定義した概念。 

全社戦略においては、①ドメイン(事業を展開する領域) ②コア・コンピタンス ③資源配分(経営資源の全体的な最適化) に注目する必要がある。
企業のコア・コンピタンスは、ブランド、技術開発力、物流ネットワーク、生産方式、共通の価値観など、さまざまなものがありうる。例えばスポーツシューズ・メーカーのナイキの場合、他社の製品と比べて技術面、品質面で大きな差がない場合でも、消費者がナイキのシューズに対して高い価値を感じるのは、ブランドというコア・コンピタンスがあるからと言える。グロービス・マネジメント・スクール MBA用語集




経営資源の制約を乗り越えるための戦略



日本企業が1980年代に成長できたのは、「ストラテジック・インテント」を活用したからだと、プラハッドは言います。

コアコンピタンスという言葉は、ストラテジック・インテントという文脈から生まれてきたようです。



成功したグローバル・リーダーは、経営資源や能力をはるかに超える野心を抱いていた。

組織のあらゆる階層に勝利への執念を植えつけ、グローバル・リーダーになるまでの間、10年でも20年でも、その執念を燃やし続けたのである。

日本企業が活用したストラテジック・インテントの例


・コマツ 
「キャタピラーを包囲せよ」
・キャノン
「打倒ゼロックス」 
・ホンダ
「第二のフォード・モーター」

ストラテジック・インテントの条件


  • ストラテジック・インテントは、勝利の本質をとらえている。
  • ストラテジック・インテントは時間が経過してもぶれない
  • ストラテジック・インテントは、社員が一個人としても献身するに値する


ストラテジック・インテントは、旧来の戦略プランニングとは異なる。
戦略プランニングは予測できる未来に対して、投資意思決定をする。もしくは、目の前の問題をあぶり出すために活用される。

旧来の戦略プランニングでは、経営資源や市場状況からスタートするが、ストラテジック・インテントを活用する場合は、大きな野心に、積極果敢なマネジメント・プロセスを伴う。



ストラテジック・インテントを活用したマネジメント

ストラテジック・インテントのマネジメントプロセス



マネジメントのポイントは下記の5点がまとめられています。


  1. 社内に緊迫感あるいは危機的な状況を生み出す
  2. ライバル企業に関する情報を大規模に収集し、全社の目を競争相手に向けさせる
  3. 仕事のパフォーマンスを高めるスキルを社員たちに身につけさせる
  4. 一つのチャレンジを十分消化してから、次の挑戦課題を与える
  5. わかりやすいマイルストーンと反省の仕組みをつくる



-すべての社員が自分の取り組みを業界の最高水準と比較できるよう、しかるべき仕組みをつくり、一人ひとりの心に経営課題を深く刻み付ける-


—マイルストーンを通して、挑戦課題の進捗を把握し、望ましい行動につながるよう業績評価指標や報酬制度を設ける。



従来の戦略観は、目の前のビジネスチャンスにふさわしい資源が自社にあるかどうかを重視するが、ストラテジック・インテントの場合、経営資源の制約などは度外視し、大望を掲げる。 
そこで経営陣は、この溝を埋めるために、新しい優位性を計画的に築くよう社内に檄を飛ばす。挑戦課題を具体的に示すことは、まず何に努力するべきかを社内に伝え、新しい競争優位を段階的に獲得する手段にほかならない。


野心と戦略を統合する


新しい競争優位は、分析からの戦略構築だけでは生まれない。

デザインとは、企業の野心や熱を見える化して戦略と統合すること
だと思います。

デザインが注目をあびているのは、デザインがもっている「統合する力」だと思います。

表面的なグラフィックデザインでは、戦略との統合は生まれないが、デザイン思考を通じて、ユーザーと共感し、組織全体がユーザーのインサイトと向き合うようなことができると、競争優位が生まれる。


不確実性が高い時代には確かな戦略を求めるより、どんなときもブレない指針をもっていることが大切。その指針をもって、戦略を構築し、組織に落とし込んでいく。

この統合していくプロセスがデザインの役割であって、旧来の戦略プランニングの考え方では対応できない部分。


ここらへんは、MITの伊藤さんの言葉を思い出します。
この対談が面白いです。

伊藤穰一×林千晶 対談2013予測しない、実践する、今想像できないことをしたい。[前編]







下記の石井さんの理念駆動もストラテジック・インテントと同じ意図だと思います。



MIT石井教授の理念駆動という考え方


MIT石井裕教授が提言。「ICT敗戦国」日本を生きるクリエーターに必要な2つのこと~EVERNOTE DAYS 2014レポート

http://engineer.typemag.jp/article/mit-ishii-evernotedays





参考図書


世界を変えるビジネスは、たった1人の「熱」から生まれる。




PDCAサイクルではなく、QPMIサイクルの考え方は、組織に熱を浸透させるために非常に参考になります。

Q:Question(クエスチョン)さまざまな事象から課題を見出す
P:Passion(パッション)課題解決に対して情熱を抱く
M:Mission(ミッション)課題をミッションと捉え、チームを作り取り込む
I:Innovation(イノベーション)チームの推進力により新たな価値の創出を目指す

どうやって組織の中にある「熱」や「野心」を引き出し、戦略と統合していくのか。考え方や方法論をこれからも探っていこうと思います。


関連するオススメ本


意志力革命 目的達成への行動プログラム






スライドシェアに内容をまとめてみました。




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