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「副業解禁」「専業禁止」の制度から考える「学習する組織」

LIGさんも新しい制度として「副業解禁」を取り入れて話題になっていますね。

【副業解禁】LIGが第9期から導入した新しい制度や就業規則を紹介します
http://liginc.co.jp/news/notice/other-notice/169836


学習する組織をデザインするためには、一人ひとりの「経営者意識」が前提条件としてあると思っています。
職種に紐づく役割だけではなく、経営全体に対して自分がもっている影響度をどこまで意識できるか。

当然、縦割り・ピラミッド型の指示系統がないと動けない組織では、自主的な学習は生まれません。

では、どうすれば経営者意識、自主的に事業をつくる個人が育つのでしょうか。

社員全員に「経営者意識」を根付かせるための、働き方をデザインしている事例として、副業を会社として認めている会社のことを少しだけ調べてみました。


エンファクトリーの事例



ワールドビジネスサテライトで取り上げられていました。


専業禁止の制度で有名な会社です。

エンファクトリーでは「専業禁止」を制度として設けています。
複数の事業を掛け持つことを推奨、つまりパラレルキャリアを推奨しているそうです。

副業をするにあたり、一つだけルールがあるとのこと。

「副業でやっていることをオープンにして知識共有をする」ということ。
           

副業で経営者を経験すると、マーケティングをやるし、営業をやるし、つくる部分も販売することも自分でやらないといけない。

副業を推奨したことにより、どのように知識創造のプロセスが変わるか?


残業時間が20%減少したという成果が出ているそうです。

社員の学習や成長に紐づく部分であると、「経営に関するリテラシーが格段に上がる」ということが大きいそうです。


プロとしてお客さんと対峙して、値決めもそうですし、お金をちゃんともらって儲かってるのかってやるし。世の中の仕組みで言えば確定申告とかの話もして、リテラシーが格段に上がるんです。

 
SECIモデルで知識創造プロセスを整理

エンファクトリーは、副業を推奨して、外部の知識を組織内に取り込むプロセスをしっかり設計しているのが素晴らしいなと思います。




 
     

 

共同化

 (左上)副業で経営者の立場を経験する=経営者意識を醸成


経歴、ものの見方、動機が異なる複数の個人間での暗黙知の共有が、組織的知識創造を起こすためのきわめて重要なステップとなる。そして、個人の感情、想い、メンタル・モデルの共有が、相互信頼を築くために必要である。

自己組織化チームは、組織的知識創造を促進する。なぜなら、そのようなチームは最小有効多様性と情報冗長性を持ち、組織意図の解釈を共有するからである。トップは挑戦的な目標を与えることによって創造的カオスをもたらし、チーム・メンバーに高い自由度を与える。そして、任務の範囲を自主的に設定しはじめた自律的なチームが、「境界を超える組織単位」バウンダリー・スパンニグ・ユニットとして外部環境との相互作用を開始し、暗黙知と形式知を蓄積していくのである。
P127 組織的知識創造の理論  知識創造企業 野中郁次郎著

表出化

(右上)組織の外の人と対話・議論する=経営を自分でコントロールすることを深く学ぶ
※その学びを副業という形で表現する・実践する。

自己組織化チームは、そらに集団的思索としての持続的対話をつうじてそれを明示化する。共有されたメンタルモデルは言葉に表現され、最後に明示的なコンセプトにまとめられる。
P127 組織的知識創造の理論  知識創造企業 野中郁次郎著      


連結化

(右下)副業でやっていることを言語化して共有する=自分のやっていることを言語化

正当化は、新しく創られたコンセプトが組織や社会によって本当に価値があるかどうかを決定するプロセスである。
P128 組織的知識創造の理論  知識創造企業 野中郁次郎著      

内面化

(左下)副業と本業を結びつけ、社内で議論をする=本業に活かす 知をつくる

正当化されたコンセプトは、この第四フェーズで目に見える具体的なもの、すなわち原型に変換される。新製品開発の場合の原型は、プロトタイプである。
P130 組織的知識創造の理論 知識創造企業 野中郁次郎著   



人が育つ仕組みを考えるときは、知識が創造されていくプロセスをどのように設計するかを考えると整理しやすいです。

専業禁止の背景にある考え方=働き方のリデザイン


副業の推奨は、会社にとってもメリットしかないと社長の加藤さんは言います。
副業も社員教育・キャリア開発の1つと捉えることができると。

クリエイティブな仕事、付加価値を生み出すことが求められる時代。
人生や仕事を自分自身でデザインしていく、主体性が求められてくるのだと思います。

社内制度を整えるというより、働き方そのものをリデザインしていくという視点が大切になってきています。
そして、働き方をリデザインすることを戦略の中心に位置付けようとしたトップの決断がポイントなのだと思います。

知識スパイラルを動かすのは、「目標への想い」と定義される組織の意図(intention)である。
P109 組織的知識創造の理論 知識創造企業 著 野中郁次郎


ピラミッド型からネットワーク型の組織に


副業推奨という仕組みは、コ・クリエイション、コネクトといった考え方とも近いなと感じています。

ピラミッド型で上から下に知識が落とされていた時代から、組織や業界・業種をまたいで、外部と緩やかなつながりをつくり、知識を共有しながら、自分自身を磨いていく、ネットワーク型の組織に変わっていく流れにあると思います。


参考図書

コネクト 企業と顧客が相互接続された未来の働き方



Pintrestにコネクト型企業のメタファーを載せています。

コ・イノベーション経営: 価値共創の未来に向けて 



まとめ


大きい組織だからこそ、働き方を変え、個人からイノベーションを生み出すような仕組みをつくっていく必要があると感じています。

いきなり専業禁止!まではもっていけなくても、個人がもっている知識を育て、発信する機会をつくるといったレベルからでも実行はできそうです。

個が活きる組織をデザインするためにできることを、これからも探っていきます。

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