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【TED】ジュリア・カセム「Design can Empower」から学ぶインクルーシブデザインの可能性について



Design can Empower



http://tedxkidschiyoda.com/speakers/1556


ジュリア・カセムさんは、インクルーシブデザインの研究・実践の第一人者。
彼女のTED動画を見つけ、内容が興味深かったので自分のインクルーシブデザインに対する考え方を含めてまとめてみました。


インクルーシブデザインとはなにか?

インクルーシブデザインから伝えていくこと・・・



・障害というものはデザイナーが革新的で質のいいデザインができるためのパワフルな「道具」であることを見せていく。
・インクルーシブデザインは不可能と思える状況を変革させることができる「道具」である。

インクルーシブデザインとは・・・


・人それぞれの多様性と違いを理解するためのデザインプロセス
・障害者をユーザーではなくデザインパートナーとして巻き込むデザインプロセス


単なるプロダクトやサービス開発の手段ではなく。
文化を捉え直し、人と人を繋ぎ直すための手段となり得る。

その多様な人たちが関わり協働するプロセスから社会をより豊かなものにする。

インクルーシブデザインとイノベーション


・エキストリームユーザーを理解するとメインストリームのイノベーションが可能になる
タイプライターは、エクストリームユーザーの想いを汲み取ってデザインされ⇒メインストリームに広がった。

タイプライターが生まれた背景


全盲の人が手紙を書きたい、キレイな字で書きたい、コミュニケーションを取りたいという欲求からデザインされた。
エクストリームユーザーのニーズを理解することで、メインストリームでイノベーションを起こすことができる。

リバースイノベーションの考え方にも近いのではないかと考えています。


リバース・・イノベーション



リバース・イノベーションでは、途上国の市場ニーズに合わせてサービス開発を行うことが、新興国におけるイノベーションにもつながるという考え方。

リバース・イノベーションは発明からではなく、忘れることから始まる。学んだこと、見てきたこと、最大の成功をもたらしてきたことを捨て去り、富裕国でうまくいった支配的論理を手放さなくてはならない。
リバース・イノベーションも含めて、・イノベーションは本来、ニーズ評価とそのソリューション開発がすべてである。ただ、少し複雑なのは、歴史あるグローバル企業は富裕国でのイノベーションには慣れているが、新興国のニーズやソリューションはそれとは大幅に異なっている点である。それゆえ、リバース・イノベーションは白紙の状態から考え始めなくてはならない。
今までの思考の枠の中に出るために、エクストリームユーザー(本来はターゲットと想定されない方)に向き合う機会を使うことは、インクルーシブデザインにも共通しているところがありそうだと感じます。


なぜ障害がデザイナーに必要か?


・必要な問いを引き出すことができる
・大切な原点に戻ることができる
・新しい道をひらくことができる
・人間工学的なところに正確にこたえられる



なぜインクルーシブデザインが重要か


・高齢化社会
だれもが何かしらの「障害」を抱えて生きることになる。(これは現状でも同様かもしれない。)
そもそも、医療で障害のすべてを解決することはできない。それであれば、障害があっても豊かに生きることができる社会をデザインすることを考えた方が効率的。


この新しい時代には、「バラバラな人間が、価値観がバラバラなままで、どうにかしてやっていく能力」が求められている。

「人間はわかりあえない。でもわかりあえない人間同士が、どうにかして共有できる部分を見つけて、それを広げていくことならできるかもしれない」
これは平田オリザさんの言葉。

デザイナーが理解するべきこと


インクルーシブデザインはクリエイティブとしてもビジネスとしても重要だと理解する。

デザインがどのように排除してしまうかを理解する。
デザインがいかに力を与えてくれるかを理解する。

障害者を巻き込むデザイン


障害者と健常者というカテゴリーに関係なく協働し、学び合い、創造できる場からイノベーションを起こせる仕組みをつくることができれば、大袈裟に言うと「差別」もなくせるのではないかと考えています。

特質な興味・関心、特質なニーズをもっている人の発想をどのように活かすか。
特質な興味・関心、特質なニーズをぶつけることで健常者はどんな気付きを得られるか


持続的なイノベーションを生み出していくために、インクルーシブデザインは一つのキーワードとなってくるはず。まだ確立されていない分野だけに、一つひとつ実践を積み重ねていきたい。

講演の内容を聞いていても、デザインの共通言語として「インクルーシブデザイン」が使われる日もそんなに遠くはなにのではいかと感じさせてもらえる内容でした。
ビジネスセクターが、インクルーシブデザインをどのように捉え、取り入れていくかが鍵になってきそうな気がします。

ジュリア・カセムさんはインクルーシブデザインに関する技術知識の共有を目的とした”The Challenge Workshops”を企画・運営して、世界にそのコンセプトを広げているとのことなのでぜひ、参加してみたい。

Amazonで予約がはじまっているカセムさんの本
インクルーシブデザイン: 社会の課題を解決する参加型デザイン






インクルーシブデザインから、どんなアウトプットを生み出すことができるか。

交流や気付きも大切だと思いますが、「実」「質の高いアウトプット」にこだわっていくことがインクルーシブデザインを、デザイン業界、ビジネス業界の共通言語にしていくために必要になってくるはず!

頭で考えるだけでなく、現場を観察して、多様な人を巻き込んで、失敗を重ねながら実践していきたい。


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