スキップしてメイン コンテンツに移動

【読書メモ】大前研一「新・資本論」―見えない経済大陸へ挑む&クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭

Newspicksのヘビーユーザーになってから、日本の国際競争力って何だろうか?と考える機会が増えました。
ピッカーの方々がグローバルに仕事をしており、コメントに日本人としてどのようなスタンスをとって物事を考えるべきかを学ばせてもらっているからかもしれません。

最近読んだ(読み直した)2冊の本の書評をブログにまとめておきます。2冊とも資本論です。

大前研一「新・資本論」―見えない経済大陸へ挑む


クリエイティブ資本論―新たな経済階級の台頭


日本の国際競争力とは何かを考える上で、大前 研一さんの世界視野で語られる主張はとても参考になります。

日本が国際競争力をもつために実施するべきこととして、大前さんのオーガナイズ・スモール思想が前提になっています。
・道州連邦制
日本の一つ一つの道州を1国家とみなす。その国家はクオリティ国家であるべき↓
・クオリティ国家
経済規模は小さく、人口が300万人〜1000万人、1人当たりGDPが400万円以上で、世界の繁栄を取り込むのが非常にうまい

▼これから求められる人材
ゴジラ企業をつくれる人=エコシステムをデザインできる人、プラットフォームをつくれる人

※ゴジラ企業の条件
見えない大陸のもつ特徴を活用できる能力が備わっていることを証明すること。すでに発見されている新大陸の特徴を活用するのは最低限のことであり、自分たちが独占的収穫を上げられる領地を確保し、同時にそれを拡張できる能力を併せもっていると証明できる。

今の時代は、プレイヤーが誰なのかを把握する力よりも、どういった力が、さまざまなプレイヤーを前進さえたり後退させたりするのかを理解することのほうが重要。



創造的な都市とは何か?を考える上で具体的な指標が紹介されています。
※アメリカの都市を中心に分析されているため、世界的な比較、日本の都市におけるクリエイティビティの分析ができると良い。

▼労働人口を5つに分類
ⅰクリエイティブ・クラス
ⅱスーパー・クリエイティブ・コア
ⅲワーキング・クラス
ⅳサービス・クラス
ⅴ農業

クリエイティブ・クラスとカテゴライズされる人が増えてきている。クリエイティブクラスが集まる地域には特徴がある。その特徴を表す指標として、クリエイティビティ・インデックスが使われています。

▼新クリエイティビティ・インデックス
技術・才能・寛容性のスコアリング
下記4つの指数をもとに算出される。
ⅰ労働力におけるクリエイティブ・クラス人口の比率
ⅱ一人あたり特許件数で測るイノベーション
ⅲハイテク指数
ⅳゲイ指数、多様性の開放度


多様性とクリエイティビティの相関性に関する考察が面白い↓

▼三つの多様性指数を合成した合成多様性指数(CDI)
①メルティングポット指数
移民の地域別集中度

②ゲイ指数
ゲイの地域別集中度

③ボヘミアン指数
作家、デザイナー、ミュージシャン、俳優、映画監督、画家、彫刻家、写真家、ダンサーなど芸術を職業とする人口の比率を測定したもの。

ゲイ人口の地域別集中度を示し、その指標とクリエイティブ都市の相関性を導き出している。ゲイコミュニティへの開放度が高い地域は、ハイテク産業の集中度と相関性がある。

▼考察
成功している地域は、スタジアムの建設や、工場や小売チェーンの誘致、新事業インキュベーション施設の整備を実施してきたわけではない。

重要なのは、解決策はそれぞれの地域のなかにあるということだ。住民の知識、知性、クリエイティブな能力にかかっている。

都市開発を行う際に、クリエイティビティ・インデックスを一つの指標として取り入れられると、持続的に成長する地域をデザインすることができるのではないかと考えています。


高知県で地方の魅力を発掘し続けるでデザイナーの梅原 真さんの活動は参考になります。
http://colocal.jp/topics/think-japan/innovators-intaview/20130225_15709.html

地域を豊かにするという発想を、より定量的に分析し、現場に活かすために非常に参考になる本です。

このブログの人気の投稿

Googleの創業者、ラリー・ペイジによるミシガン大学のスピーチ

仕事は世界を変える気持ちでワクワクと。 でも、一番大切なのは家族。 Google創設の裏にある家族との関係性や物語。 僕にとってはジョブズに続く、いつも聞き返したいスピーチ。 [全訳] Class of 2009! First I’d like you to get up, wave and cheer your supportive family and friends! Show your love! It is a great honor for me to be here today. Now wait a second. I know: that’s such a cliché. You’re thinking: every graduation speaker says that – It’s a great honor. But, in my case, it really is so deeply true – being here is more special and more personal for me than most of you know. I’d like to tell you why. 今日、この場にいられることは、私にとって大変光栄なことです。いや、ちょっと待ってください。いまの台詞は確かに月並みすぎます。皆さんも思ったでしょう。卒業式のスピーカーというのは、決まって「大変光栄なことです」と言うものだと。でも私の場合は、本当に心からそう思っているのです。私にとってこの場にいることは、皆さんの大半が考える以上に、特別で個人的な意味のあることなのです。 その理由をおお話しましょう。 A long time ago, in the cold September of 1962, there was a Steven’s co-op at this very university. That co-op had a kitchen with a ceiling that had been cleaned by student volunteers e very decade or so.   Picture a college girl named Gloria, climbin...

メタファーを活用したユーザー調査について(ZEMT法)

最近、マーケティングの施策を考えるときに もっと、ユーザーの行動や感情に目を向けないとなと考えるようになっています。 コトラーのマーケティング3.0を読みかえしていて、ブランドストーリーの構成要素の箇所が目に止まりました。 コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則 コトラーらによれば、ブランド・ストーリーにはキャラクター、プロット(筋書き)、メタファー(比喩)といった3つの重要な構成要素がある。優れたストーリー・プロットには、チャレンジ型(ヒーローが困難な敵を倒す)、コネクション型(この世に存在する断絶を埋める)、クリエイティブ型(新しい解決方法を生み出す)がある。また、そのさい、消費者の意識の根底にあるメタファーを明るみにする作業が有効である。例えば、7大メタファーとして、バランス、変化、旅行、容器、つながり、手段、コントロールがあるという。そしてキャラクターはストーリーの要である。「コトラーのマーケティング3.0」 消費者の意識の根底にあるメタファーを明るみにする作業 ここからインサイトを把握するプロセスはもっと現場に起こし込めるといいなと考えています。 理論的なところを勉強するより 形を変えながらでも実施して、何とかユーザーのことを理解しようという意識をもち動くことが大切だと感じています。 先日に書いた 伊右衛門のコンセプトメイキング についてでも、メタファーを活用した質問をして コンセプトをつくりだしたのは、専門性のある調査を実施したからではなく 何とかユーザーのことを理解しよう、お茶と生活との関係性を根本的に問い直そう といった調査に取り組む前のスタンスがあったからこそ成功したのだと思うのです。 優れたプロダクトやサービスのコンセプトをもっている企業は、 徹底的にユーザー調査を行い、ユーザーを理解し、そこからブランドのストーリーを組み立てている。 だから、ユーザー調査(特にメタファーを活用した手法)は現場で実践していこうと思っています。 ZEMT法 マーケティング3.0の中でも紹介されているのがZMET法。 ZMET調査(Zaltman Metaphor Elicitation Technique:ザルトマン・メタファー表出法)」 ザルトマンは、この手法を開発した...

【Break the bias】バイアスをこわして創造性の高い思考をつくるためのアプローチ

ダイヤモンドで イ ノベーターとして有名なZIB A の濱口秀司さんと、マーケット感覚を身 に つけ よ うの「ちきりん」さんが、創造的な思考プロセスについて対談をしていました。 最も創造性が高い思考のモードは、論理と直感の間にある http://diamond.jp/articles/-/74287 創造性が高い思考モードの図 自分の思考プロセスを認識した上で、バイアス(制約)を外し、理想の状態をつくる。 これは、学習する組織で紹介されているシステム思考の考え方と同様だと思います。 リーンスタートアップやUXデザインにおいて、様々な方法論が紹介されていますが、すべて「個人と組織の思考プロセスをどのようにコントロールするか」ということに集約されるのではないでしょうか。 濱口さんが提唱されているイノベーションを生み出すための思考「Break the bias 」の理解を深めようと、 より良い思考プロセスをつくるために、できることを簡単にまとめてみました。 Break the biasを学ぶための濱口さん講演動画 このTED動画はイノベーションの思考プロセスを理解するために必見です。 Break the biasを実践するために活用するフレームワーク 濱口さんの考え方として紹介されているのは、1.2×2マトリックスのフレームワークが多いと思います。2.挙動パターンの図 3.免疫マップはBreak the biasを実践する際に活用できるかなと思っています。 2×2マトリックス 挙動パターンの図 免疫マップ フレームワーク図をもとに紹介していきます。 ① 2×2のマトリックスで整理してポジションをズラす おもしろい企画を考えること で紹介した図です。 濱口さんの考え方の基本原則は「見えないものは壊せない」 アイデアや事象は、そのままでは見えない。マトリックスで縦軸・横軸にタグ付けをして、ポジショニングを考えることで動かせるようになります。 東京大学i.schoolの濱口さんワークショップのムービーが、バイアスを壊すためのプロセスがわかりやすく整理されています。 バイアスを壊すプロセス 典型的な(切り口はなんでもアリ...